5 Jan 2016
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日本税理士会連合会(以下、日税連)の会報誌「税理士界」の新年号の14、15面に社会保険労務士による年末調整業務に関する大きな記事がありました。
2面にわたっての大々的な記事です。
「月刊社労士」27年5月号の記事から問題勃発
社労士の年末調整業務については、これまでも問題になっていたものの「見て見ぬふり」というのが実際でしたが、全国社会保険労務士連合会(以下、全社連)の機関紙である「月刊社労士」の27年5月号で「社労士業務のポイント マイナンバーの取扱いにおける社労士・税理士間の業務のすみ分け」の記事から問題が勃発。夏ごろにはEPSONのTabisLandでもネット記事が配信されていました(こちら)。
私もお盆くらいにこの記事を目にしましたが、年明けの税理士界をみると結構な大事になっているようです。この記事を見たとき、「あぁ、やっちゃったなぁ」と思った記憶があります。というのも、ウェブで「社労士 年末調整」検索するとわかると思いますが、多くの社労士が年末調整を業務として行っていて、中には、全社連も認めていない「源泉徴収票や給与支払報告書その他の法定調書なども作成します」と大々的に掲載しているところもあります(今もあるかは不明。さすがにこれだけ問題になれば消したかもしれません。)。まぁ、税理士としても年末調整業務は大きな業務ではない(収入源として重要な位置を占めているわけではない)という事もあって、見て見ぬふりをしていたのでしょうが、こうやって公な機関紙で「社労士は年末調整をできますよ」公表するとなると日税連も黙ってはいられないのでしょう。
年末調整に関する国税庁の見解
年末調整に関する国税庁の見解が税理士界に掲載されていました。
国税庁に法解釈について確認したところ同庁から「所得税法第190条に基づく年末調整計算は、租税確定手続きであり、税理士業務の対象となる事務に該当することから税理士以外の者である社会保険労務士が当該業務を行うことは、税理士業務についての業務制限を定めた税理士法第52条に抵触することになる」旨の回答を得ている。
所得税法第190条は国税庁HP「所得税法第190条」でも掲載しています。
平成14年に日税連と全社連で確認書を締結
実は年末調整業務については税理士と社労士との間で昔から問題になっていましたが、「このままではいけない」ということもあって平成14年に日税連と全社連で確認書を締結しています。
年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理業務の制限)に違反すること。
日税連としては、この確認書で表向きは一応解決したと思ったはずです。…ところが、今回の騒動。他にも全社連の主張など色々書いていますが、書くと長いし誤解を招くといけないのでここでは割愛します。
気持ちはわかるけど、同じ士業としては、やっぱり境界線はしっかりと守らないといけないのではと思っています。江戸の敵を長崎で討つということになりかねませんしね。
今後どうなるか、これからの展開に注目です。